ごあいさつ・講演録

10月メルマガ

2005/10

国際青年会議所の世界会議に出席するために、40人の横浜JCのメンバーとともにオーストリアのウィーンに行ってきました。ウィーンは絶対専制君主のハプスブルグ家の時代と、グスタフクリムトやオットーワグナーが活躍した19世紀末の二度、世界の中でも光り輝いた時代がありました。この二つの時代の素晴らしい財産を大切に生かした街づくりをしているのがウィーンという都市の大きな特徴です。

いまでもウィーンの街は旧市街と新市街がしっかり分かれていて、旧市街は寺院や市庁舎などの一部の特別な建物以外はほとんどすべてが5階建てで高さが統一されていて、街並みに一体感があります。ハプスブルグ家の紋章である双頭の鷲をあしらった巨大な彫像が正面の5階に掲げられた荘厳なバロック調の政府庁舎の向かい側には、同じ高さでゼセッションスタイルの機能的な郵便貯金局の建物が100年後の今でも未来的だと感じるデザインでそびえ立っています。

共和制であるオーストリアでは王宮や貴族の宮殿が、今では美術館・博物館や迎賓館などに活用されています。ヴェルデベーレ宮殿の上宮では有名なクリムトの「接吻」を鑑賞しましたが、照明を落とした高い天井の真ん中から吊り下げられて部屋の中央に浮かび上がるこの絵の展示方法には、この街のかけがえのない財産を最高の演出で世界から来る人々にお見せしようという意気込みさえ感じられました。またここでは第二次世界大戦から戦後にかけての風俗や指導者の肉声や同時代の政治的な絵画や彫刻を様々な形で鑑賞させてくれる展示方法の工夫にも感心させられました。

クリムトの壁画がゼセッション館の地下に残されていたり、ウィーン美術史美術館には装飾画として残っていたりして、あるものをあるがままに見せようという姿勢には感心させられますし、二つの同じ建物が向かい合っているオットーワーグナーのカールスプラッツァーの駅舎もひとつはそのまま鑑賞できる作品として、もうひとつはカフェーとして残されており、芸術が街の中に溶け込んでいることを感じさせてくれます。シェーンブル宮殿では日本語の音声ガイドも完備されており、海外からの旅行者にも親切なサービスがあります。

ウィーンには全部で100を超える美術館や博物館があります。子供の教育施設と現代美術館が一緒にあったり、クリムトの絵画がいろいろな美術館に分散していてクリムトを観るだけでウィーンの街を歩き回ることになったり、歴史的な建造物を上手に活用していて美術作品を鑑賞するだけでなくその建造物の素晴らしさも堪能できたりと、街全体で文化や芸術を大切な財産として最大限に活用していこうという意識が伝わってきます。応用美術博物館では、日本のマンガを現代美術あるいは風俗として特集しており、荘厳な建物の中に大きなパネルになった日本のマンガがたくさん展示されているのは不思議な気分でした。

今年、私たち横浜青年会議所は横浜経済人会議で横浜にある歴史的建造物をもっと活用しようという提言をしました。横浜とはスケールも違いますが、このウィーンの街から感じられる文化芸術の香りの演出方法は大いに参考にするべきです。歴史的な建造物と現代美術のコラボレーションがBankArtで始まりました。港町に不可欠な倉庫という大空間で現代美術の祭典であるトリエンナーレが開催されています。北仲BRICK、北仲WHITEでは、古い建物の中にアーティストたちの仕事場が出来ました。横浜でもようやく動き始めた歴史的・文化的な財産を活用した面白い試みも決して一過性のものにすることなく進めていきたいものです。

二年前、クリムトの官能的な絵画を所蔵しているウィーンのレオポルド美術館が夏の期間に限り、ヌードまたは水着で来館した人は無料で入場できるというキャンペーンを行ったときの館長のコメントです。「夏は暑いしみんな泳ぎに行きたがる。泳ぎに行きたいのにわざわざ美術館に足を運んでくれる人が両方の気分を味わえてしかもお得ならいいことでしょ。」このニュースは世界中を駆け巡り、大きな話題になりました。文化芸術に携わる人にはこういうユーモアのセンスも持ってもらいたいものですね。


社団法人横浜青年会議所
理事長 黒川 勝
(実は博物館学芸員の資格を持っています。)

 
黒川勝事務所